110_堺北花田グランアヴェニュー防災会;大規模マンションの持続可能な防災活動の取組

防災・防犯部門

部門賞

堺北花田グランアヴェニュー防災会
大規模マンションの持続可能な防災活動の取組

グランアヴェニュー 末永 浩二

背景

  • 私たちの住む「北花田グランアヴェニュー」(以下GA)は堺市北区に位置し、平成11(1999)年~平成15(2003)年にかけて建設された全6棟715世帯(26階建1棟と14階建て5棟)の大規模分譲マンションです。
  • この地は将来発生が予測される「東南海地震」、及び発生すれば甚大な被害が予想される「上町断層地震」の影響(堺市北区で震度7)をまともに受ける場所であります。また一級河川の大和川や過去に氾濫実績のある西除川にも近く、河川氾濫や近年のゲリラ豪雨による水害に対しても備えが必要です。
  • 大規模地震や水害が発生した場合、当マンション自体の被害の他、設備の破損、ライフラインの麻痺等により復興には長い時間がかかると予想されます。そのため「自助」及び居住者同士の協力「共助」の基本方針のもと災害に強いマンションを目指し、平成25(2013)年に管理組合、自治会から独立し継続的な活動ができる組織として「GA防災会」を発足しました。
  • 管理組合や自治会の役員は実質1年で交代するため、長期的な視点に基づく活動が困難になりますが、防災会の役員は任期を定めておらず経験や知識の蓄積・継続が望めるため、防災計画を確実に実行でき現在に至っています。

目的

  • 「GA防災会」は大規模マンションにおける持続可能な自助・共助のまちづくりのため、以下の2点を重点に取り組むことを目的としています。
東南海地震・上町断層地震に対する防災体制及び大和川流域の水害対策
  • 「GA防災会」が先進的な防災活動に取り組むことで、GA近隣の築50年前後の公団住宅、府営住宅を巻き込んだ地域ぐるみの活動につなげていきたいと考えています。
マンション内のコミュニティ形成
  • 近年高齢化するマンションでの防災について、ハードとソフトの両面からの取組を地道に積み重ねて防災に強いマンションとして自助と共助で住みやすい環境の確保を目指しています。
  • 防災には様々な活動項目があります。防災組織をつくる、マニュアルを作る、備品備蓄品を準備する、マニュアルに沿って訓練をする、居住者の防災知識アップのための活動、幅広く参画意識を盛り上げる等々。これらの活動を通して、マンションが一丸となり自助と共助を実践することにより、万一の大災害発生時に助け合えることを目指しています。

実施内容

第28回添付資料(大規模マンションの持続可能な防災活動の取組)
●東南海地震・上町断層地震および大和川水域水害に対する「GA防災会」の取り組み
平時の活動
  • 毎月;防災委員会を開催し、活動の検討
  • 毎月:防災活動ニュースの発行(全715戸への紙ベースでの配布)
  • 年1回;全世帯への「防災力アンケート」の実施
  • 年1回;防災訓練の実施及び防災講演会の開催 随時;防災会ホームページの更新
災害時の活動訓練【防災訓練】
  • 平成28(2016)年から年1回実施している防災訓練では、棟ごとに「棟災害支部」を作成し全戸の安否確認を実施、災害対策本部へ情報を集約するといった取り組みを行っています。
  • 災害発生時の役割分担として居住者を「情報・設備班」「救出・救護班」「消火班」「給水・給食班」「警備班」の5つの班に分け、それぞれの班が発災時の活動を行うことにより、実践的な内容の防災訓練を行っています。今年度も11月に防災訓練を予定しており、新たな取り組みとして学生ボランティアの参加を呼びかけ、あらゆる年代が発災時に実働可能な組織となるよう防災力を高める活動を計画しています。
  • また地元校区自治連合会や地域警察、消防との情報共有も行っており、見学者の受け入れや警察からのお知らせなど地域との連携を強める取り組みも実施しています。
よき避難者の育成と入居者のコミュニティ形成
  • 「GA防災会」は自助だけでなく共助もできる避難者(よき避難者)の育成と入居者のコミュニティ形成のため、以下の取り組みを実施しています。
棟別懇談会の開催
  • マンションは入居者同士のつながりが弱いと言われています。令和3(2021)年度よりこの課題の解決に向け「棟別懇談会」の取り組みを始めました。時間のかかる取り組みですが、まずは棟毎に居住者がお互いに気軽に話し合える場を作ることから一歩ずつ着実に進めています。
防災活動リーダーの輪を拡げる「千縁の会」
  • 防災委員会終了後に会費千円で飲み物と軽食を準備し気軽な交流の場「千縁の会」をつくりメンバーの意思疎通と拡大に取り組んでいます。
管理組合、自治会の取り組み
  • 自治会では年1回の「ふれあい祭り」や各種サークル活動を行い、居住者同士のコミュニティ形成を図っています。管理組合では植栽庭園美化活動、防犯パトロール隊、施設利用委員会等をコミュニティ強化として取り組んでいます。また、介護等の必要な方、一人住まいの方、援助の必要な方の把握のため令和4(2022)年に、5年に一度の入居届の再提出をお願いし、最新の入居者情報の把握を進めています。

実施結果

年1回実施している防災訓練の参加者実績は以下の通りです
  • 平成28(2016)年3月第1回防災訓練;238名参加
  • 平成29(2017)年3月第2回防災訓練;185名参加
  • 平成30(2018)年3月第3回防災訓練;152名参加
  • 平成31(2019)年3月第4回防災訓練;209名参加
  • 令和2(2020)年3月 新型コロナウイルス感染防止のため中止
  • 令和2(2020)年11月第5回防火防災訓練(消防訓練と併せて実施);212名参加
  • 令和3(2021)年11月第6回防火防災訓練(消防訓練と併せて実施);224名参加
  • 令和4(2022)年11月第7回防火防災訓練(消防訓練と併せて実施);195名参加
  • 令和2(2020)年からは新型コロナウイルスの影響もあり、それまで別に実施していた消防訓練と併せて実施しています。防災訓練については出来る限り自前を基本にしていますが、令和2(2020)年度からは堺市北消防署の協力のもと煙体験ハウスでの避難訓練、はしご車の延悌実演、また住戸バルコニー避難ハッチからの降下避難体験など参加者により興味を持ってもらう新たな防災訓練メニューを考案しています。 これらの取り組みを通じて、居住者間の交流が盛んになるとともに、よき避難者としての防災意識も随分向上し、協力体制や災害時の行動も浸透してきました。

苦労した点・工夫した点

  • 1年目は初めての取組として意識も高く238人が参加しましたが、その後少し減少傾向になり平成31(2019)年から訓練内容等を見直し、同時に災害時に役立つ防災用品の紹介等も実施しています。
  • 防災訓練の参加が居住者の3割程度でこれ以上増やすための企画に悩んでいます。いかに全体の取り組みにするかを今後とも検討してまいります。今後の課題として、学生との防災活動の展開を検討してく必要があり、トライアルをスタートしています。高齢者や障害者の避難計画、若年層、子供たちと一緒になって持続可能な活動に取り組んでいます。
  • 令和5(2023)年の夏休みを利用し、自治会と協力して「GA設備見学ツアー」を計画し、インフラ設備や防災設備等の見学を通じ、小学生から大学生その他あらゆる世代が継続的に防災に関する興味を持ってもらう取り組みを実施しました。希望者には、ボランティア活動証明書の発行も実施しています。

管理組合・居住者の声

  • 防災訓練については出来る限り自前の訓練を基本に200名前後が参加しています。住民の防災意識も高まり、各戸の備蓄等も進んできました。
  • 自分の命は自分で守る、人任せではいけないという声が聞こえるようになりました。
  • 防災会役員の人員も増え、全体のみならず棟毎に体制が組めるようになってきました。同時に若返りも進み、50歳代の委員が中心となってきました。防災会の備蓄も進み、補充と維持管理が中心の予算編成となってきました。

実施にかかった費用

  • 防災備品、備蓄品の購入の累計額は11,000千円になります。715世帯ですから1世帯約15,000円となります。備品類等の明細は上記にある「第28回添付資料(大規模マンションの持続可能な防災活動の取組)」で添付します。
  • 備品・備蓄品は購入だけでなく管理と活用が重要です。防災会では年2回の在庫調査をしています。これはメンテと同時に、決めたところに備品が管理できているかの確認です。
  • この継続きめ細かな取り組みが防災活動にとって重要と考えています。

収入増や支出減となった費用

  • なし

プレゼンテーション資料

発表プレゼンテーション資料