337_共創により「マンション管理エコシステム」を創出する管理業務への転換

管理組合運営部門

部門賞

共創により「マンション管理エコシステム」を
創出する管理業務への転換

株式会社東急コミュニティー 米藤 健太

背景

  • 今回ご紹介する、「アクレスティ南千住」の所在する南千住駅西口地区は、密集市街地の改善や地域の活性化を目指し、平成13年12月に準備組合設立、平成15年11月に都市計画決定、平成17年7月に組合設立認可、平成19年8月に建築工事着工、平成22年1月竣工しました。
  • 本年で築13年目となり、大規模改修工事の実施を控えております。地域面積は約0.3haで、地上1~2階及び北側2層部分は飲食店、コンビニエンスストア、不動産会社、薬局等が入居する商業・業務施設、2~3階は公益施設及び医療施設、7~28階は住宅(215戸)となっています。
  • 公益施設として、地域コミュニティーの核となる「南千住駅前ふれあい館」や行政手続を担う南千住区民事務所、路線バスの乗り入れ可能な交通広場やタクシープールが整備されたことにより、利便性や安全性が向上しました。
  • 南千住地域では、当再開発事業も含めた街づくりが相乗効果をもたらし、地域全体の活性化に繋がりました。 近年では、荒川区が企画する「街なか花壇事業」という花植え活動に参画し、この活動を建物関係者、地域住民、荒川区とで連携して行っていることで、地域共創に結実するような活動結果が得られています。

目的

管理組合(主に組合収支)の現状と課題
  • 近年、人件費をはじめ、原材料費やエネルギー価格の高騰等により、管理組合会計の支出が増加傾向にある。管理業務に関わる各種費用も増額傾向にあり、管理会社より業務費等の増額申入れや、場合によっては管理組合の財政が逼迫し、各組合員が負担する管理費等を値上げしなければならない事例も増えている。多くの場合は、「業務品質の低下は好ましくなく、一方で各種業務費、組合員が負担する管理費等の大幅増額も好ましくない」との意見があり、費用に関する合意形成が難航するケースも増えている。
管理会社及び、清掃・警備・各種点検業者等の現状と課題
  • 管理会社はじめ、マンション管理業に係る事業者において、近年以下のような理由により、業務費の増額申し入れを行わざる得ない状況にある。
  1. 労働人口(従事者)の減少と高齢化
  2. 人件費の上昇や各種原料価格等の高騰による影響
  3. 顧客(居住者)の期待・ニーズの多様化と高度化への対応
目的
  • 管理組合、管理会社、事業者等が抱える様々な課題解決を目的に、これまでの管理業務の在り方、仕組みの内、「ここをこう変えれば課題解決が図れる」という視点で検討を行い、「マンション管理エコシステム」の最適解を創出し、管理組合及び「居住者」と、清掃業者、警備業者、各種点検業者等の「事業者」とをつなぐ、新たな「マンション管理」のカタチを検討・提案したもの。

実施内容

清掃仕様の変更対照表
管理組合及び清掃事業者の課題解決
  • 日常清掃員が1名減になるが、管理組合負担で高性能の清掃器具を購入、清掃業者に無償貸与いただくことで、清掃業務費の増額は行わず、現行同額とする提案を行った。
  • 具体的には、管理組合に高性能のカーペットスイーパーを購入いただき、清掃業者に無償貸与いただいた。
  • スイーパーの導入により各階のカーペット清掃時間が大幅に削減(検証の結果、従前はコード付き掃除機で1フロア24分清掃時間がかかっていたところ、スイーパー導入により1フロア8分へと3分の1に短縮)できたことから、清掃員を1名減らしても、清掃品質は従前と同等程度確保できた。
管理組合及び警備事業者の課題解決
  • 防犯カメラシステムを一部、「特定のエリアに人が現れる(侵入する)と映像画面がポップアップされる」ものに変更。また、当該エリアにスピーカーを設置し、映像画面で不審な人物を確認した場合、また違法駐輪が行われたことを確認した場合、ボタン一つでスピーカーから警報音が鳴動、遠隔で不審者や違法駐輪へ警告が行えるシステムを導入いただいた。
  • これにより、従前は警備員が1日平均15回程度、現場に急行し対応にあたっていたが、このシステム導入により現場に赴き頻度を1日0~3回程度まで大幅に減少させることができる。

実施結果

共創により「マンション管理エコシステム」を創出する管理業務への転換
清掃業務の課題解決
  • 管理組合が負担したスイーパー購入費は約40万円であったが、経常的な月額業務費約16万円を増額することなく、従前同額とすることができた。
警備業務の課題解決
  • 各警備会社において、人件費等高騰により業務費を増額する中、「高齢従事者メインであるものの、警備業務費が安価な警備会社」に業務委託先を変更したものの、上記防犯カメラシステムを活用することで業務品質を従前同等程度確保できた。
  • 管理組合が負担した防犯カメラシステムのリニューアル費は約100万円程度であったが、経常的な月額警備業務費を約13万円を増額することなく、従前同額とすることができた。

苦労した点・工夫した点

  • 工夫した点として、「各種業務費の増額をどうするか」「業務品質をどう確保するか」だけでなく、マンション管理の現場における「労働人口(従事者)の減少と高齢化への対応」という課題解決を図った点が挙げられる。
  • 今回の事例において、清掃業務の清掃員を例に挙げると、現場で従事する高齢の清掃員2名より、「体力的な理由により、勤務日数を現在の半分程に減らしてほしい」という要望を受けていた。清掃員の採用難により、代替勤務者の確保が難しい中、この要望に対する対応として、「顧客との契約上、一日に勤務する清掃員を1名減らすこととするが、誰か一人が現場から外れるのではなく、出勤日数減を希望する清掃員2名を交互に出勤いただくことで、2名の要望に応える。」という対応を行った。
  • 今回の事例は、「業務費の増額を抑え、業務品質も従前同等程度確保し、業界が抱える労働人口(従事者)の減少と高齢化への対応」という様々な課題を包括的に解決へと導くことを意識し、提案を行った。

管理組合・居住者の声

  • 今回の提案は、これまでの管理業務の在り方、仕組みの中では想像してこなかったものである。知恵と工夫がマンション管理の在り方を変え、管理組合及び業界が抱える課題を解決するという、一つの良い事例だったのではないか。
  • 増額という事象に対し、「こういうご協力を頂ければ、経常的な増額は抑えられます」という選択肢をセットで提案いただけると、みんなの合意形成も得やすいと思う。
  • 以前は清掃員がコード付掃除機でカーペット清掃していて大変そうに感じたが、カーペットスイーパーを導入して、以前よりも快適に清掃が出来ている印象を受ける。清掃員も高齢化が進んでいると聞いてるので、これからの時代は、清掃員の負担を少しでも減らせるような取り組みを、管理会社だけでなく我々住民も一緒になって考えていく必要があると感じた。
  • 以前は警備員が一日に何度も建物内の巡回、違法駐輪の撤去等を行っており、大変そうに感じたが、遠隔で牽制できるシステムを導入してからは、現場に急行することも減ったのではないか。警備員の高齢化も進んでいると聞いているので、身体的負担の低減を図り、より効率的に警備業務に従事いただける環境整備が必要であると感じている。
  • 管理組合にて一時的な経費負担は行ったものの、導入した清掃用具、防犯カメラシステムにより、従前より管理の質は上がったと実感しているので、むしろ有益な投資であったと思う。

実施にかかった費用

  • カーペットスイーパー購入費:約40万円
  • 防犯カメラシステムの導入:約100万円

収入増や支出減となった費用

以下の通り、月額業務費の増額が抑えられた。
  • 清掃業務費月額約15万円…契約期間2年間とした場合、「16万円×24ヶ月=384万円(税別)」
  • 警備業務費月額13万円…契約期間2年間とした場合、「13万円×24ヶ月=312万円(税別)」

プレゼンテーション資料

発表プレゼンテーション資料