マンションライフ部門
佳作
変化する気象環境対策を目的とした
専有部内居住環境の整備
日本ハウズイング株式会社 青木 隆志
背景
- 近年、札幌でも夏場の気温が35℃前後まで達する気象下において、当マンションは1972年に建築された分譲マンションの為、各住戸にエアコンが設置されておりません。最近では高齢居住者の割合が多くなり「命に関わる問題」として認識され、居室内にエアコンを設置できる環境を整えてほしいとの意見が理事会に多く出されるようになりました。
- 当マンションでエアコンを設置する為には、ベランダに接する居間に換気口が無く壁の貫通工事を行う必要があります。しかし、管理規約で禁止されている為、現実的に個々での実施は不可能でした。このままエアコンを設置出来ない状況が続き、命の危機に直面するリスクを考慮し、理事会として全戸にクーラースリーブを設置する工事が可能であるか企画・検討することとなりました。
- 検討するにあたり、クーラースリーブ設置箇所の構造上の問題・エアコン室外機の設置場所、エアコン本体の購入及び設置方法(エアコン本体は個人負担)、各世帯との工事日程調整など検討課題は山積みでしたが、管理組合と管理会社が協力しアイデアを出し合い協議を重ね、総会(2022年5月)に上程し全員からの賛成をいただくことができました。
目的
- 夏場、専有部内で熱中症等、命に係わるトラブルを回避できる環境を設けること。
- 組合員のエアコン設置までに掛かる負担軽減を図ること。
- 管理組合の無許可による壁貫通工事を防止すること。
- 設置されるスリーブの位置や配管が統一されることで建物外観の美観を保つこと。
- 当マンションの資産価値の向上
実施内容
変化する気象環境対策を目的とした専有部内居住環境の整備
- 建築士による専有部内現状調査、及び図面等の確認依頼
- クーラースリーブを全専有部内に設置するための見積書の取得
- エアコン購入・設置希望者のとりまとめ
- 総会への提案準備
実施結果
- 知人の建築士に調査を依頼した為、設置箇所の選定等がスムーズに進行し見積書を早く取得することが出来ました。
- 建物外観部工事箇所の統一性があり、外観を損なうことなく当マンション資産価値の向上に努めることができました。
- エアコンの共同購入・設置は約7割の住戸からの申し込みがありました。設置工事までの個人負担が減ったこと、また、1世帯当たり相場の20%程度安価に導入いただくことができました。
- 総会では全員賛成という結果になりました。今夏の北海道は観測史上最高気温を観測する地点が出る等、例年以上に気温が高く、また高温が長期間継続する状況だったため(2023年8月の札幌の真夏日の観測は20日間)、夏の室内居住環境が大きく改善したとの声が多く理事会に寄せられました。
苦労した点・工夫した点
- 管理組合は「共用部分の管理」を目的とした組織である中、専有部分まで介入しない方が良いのではないかとの意見も少数ありました。
- しかし、時代に合った快適な居住環境を整えることは結果的に管理組合運営にとってもプラスになる、という考えを重視し、提案準備を進めました。
- 最も苦労した点としては、専有部内での工事が生じることから組合員と業者の都合が中々合わず、最終的に全戸完了するまで1年近く掛かったことが挙げられます
管理組合・居住者の声
- 2023年は例年以上に高温が続いたが、快適に生活することが出来て良かった。
- 一人で過ごしている高齢の母が安心して過ごせて良かった。
- エアコンを設置できるようになっても何を選んで良いかわからなかったが、理事会が斡旋してくれたことで安心して頼むことができた。
- 各住戸好き勝手に工事をやられることなく足並みをそろえられたことは良かった。
- 柔軟に物事を考えて立案してくれた理事会に感謝する。 等、多くの声が理事長に寄せられています。
実施にかかった費用
- クーラースリーブ全戸設置費用:1,100,000円(※エアコン本体の購入設置費用は組合員個々で負担)
収入増や支出減となった費用
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