73_雑排水管洗浄(立管先行洗浄方式)逆流事故防止対策

工事・メンテナンス
部門

審査員特別賞
「マンション維持修繕技術者」としてマンションの資産価値維持に貢献

雑排水管洗浄(立管先行洗浄方式)逆流事故防止対策

株式会社長谷工コミュニティ 鈴木 庸二

背景

  • 私たちの管理するマンションで雑排水管の逆流事故が増えてきました。築15年~25年の台所にディスポーザー設備があるマンションで逆流事故が相次ぎました。
  • このマンションも築20年を迎え、逆流事故が起きました。700世帯あるマンションの1事故は他にも逆流事故の恐れがあり、管理組合から早急に逆流事故を未然に防ぐ対策を一緒に考えてほしいとの相談をいただきました。

目的

  • 逆流事故は排水管の内部が詰まり、上階から落ちてくる排水が捌ききれず、最寄りの排水口から吹き出すことです。排水管の詰まりは、配管の劣化や油脂の固着等による複合的な要因で事故が起きます。
  • この詰まりを除去し、事故を防止することが目的でした。

実施内容

立管先行洗浄
「立管先行洗浄」の準備
  • 今までの「雑排水管洗浄」は専有部の排水管から立管を洗浄する方法で、専有部の細い配管を洗浄しているホースでは、共用部の太い配管を洗浄するには水圧・水量が弱く、限界がありました。
  • そこで、屋上の通気管より洗浄ホースを挿入できれば、水圧・水量を強くし、管内の汚れを除去することができます。屋上から洗浄ができた場合、今まで落とせなかった汚れが一気に落ち、配管が詰まる可能性があります。それを防ぐため横引管からも同時に洗浄が必要となります。(横引管はピットの他に、エントランスやピロティの天井内にあります。)
  • 現状を確認すると、屋上の通気管は工具がないと開かず、サビで固着して開かない場所がありました。ピロティは天井に点検口がなく、天井内の配管やピット内の配管には必要とする場所に掃除口がない状態でした。
  • 「立管先行洗浄」を実現するために、先ず、①屋上の通気管から洗浄が容易にできる対策として、ベンドキャップの改修工事165箇所②天井点検口10箇所③ピット内と天井内に掃除口49箇所を提案しました。管理組合は”必要な準備”と了承いただき、施工しました。
「立管先行洗浄」の実施
  • 屋上通気管より102本の立管を14日間掛けて、内視鏡カメラを見ながら高水圧洗浄を実施。ピット内では立管の汚れで詰まらないよう、横引管も立管洗浄と同時実施しました。
  • なかなか落ちない油脂汚れは、内視鏡できれいに洗浄されたことを確認しました。その後、専有部の排水管洗浄及びピット内横引管~最終桝までの洗浄を実施し、完了いたしました。

実施結果

立管先行洗浄
  • 配管内は常時見て確認することができない場所であります。汚れている箇所だけ洗浄するにも、立管だけで1,000m以上ある配管全てを、内視鏡で確認することはコストが高く現実的ではありません。洗浄直後の配管でないと、内視鏡を入れても、レンズに汚れが付着し、なかなか状況を確認できません。
  • このようなジレンマがある中で、理事会様に立管先行洗浄の必要性をお話しし、逆流事故が起きない方法として、立管先行洗浄を受け入れていただきました。内視鏡で確認しながらの洗浄で、洗い漏れなくきれいに洗浄ができました。

苦労した点・工夫した点

  • 準備作業に相当な時間と労力が掛かりました。①全個所の通気管開閉確認を実施②ピット内の全配管を確認し、どこに掃除口が必要か図面に落とす③エントランスやピロティの天井に点検口を設置する場所がどこか、ダウンライト等の照明器具を外し天井内を目視確認

管理組合・居住者の声

  • 作業者は全ての立管を内視鏡カメラで確認しながら洗浄をしましたが、報告書では一部分の前後の写真でしか報告ができません。しかし管理組合様とは日ごろから信頼関係を築いていたため、安心していただきました。
  • 今回の作業で逆流事故の起きる可能性は減りましたが、従来の洗浄と比較すると作業にかかるコストは上がりますが、700世帯のスケールメリットを活かし、逆流を防ぐために数年毎に雑排水管内視鏡調査を提案し、管理組合様と共に、逆流事故を未然に防ぐように努めてまいります。

実施にかかった費用

収入増や支出減となった費用