防災・防犯部門
佳作
浸水対策班による現状分析と対策提案
株式会社長谷工コミュニティ 新野 則章
背景
- 2019年台風19号により電気室等が冠水した武蔵小杉のタワーマンションの被害を受けたことを背景に、当グループの管理マンションについて、他グループの協力も得て当社で浸水対策を検討し組合提案することになりました。
- これを受けて当社の管理案件のハザードマップによる冠水想定ランクを調査、4351棟中、1466棟(34%)がハザードマップ上で冠水被害の恐れがあることが判明した為、浸水対策要望のあるマンションから現状分析と対策を提案することとなった。※添付資料:冠水想定ランク別管理物件集計表
目的
- 水害(外水氾濫・内水氾濫)に強いマンションを目指し、資産価値の維持向上に向けて提案し実現する。(現状分析と対策提案数:現在31組合)(添付資料:浸水対策検討物件表)
実施内容
~浸水対策班による現状分析と対策提案~
- ハザードマップ確認、外水氾濫、内水氾濫ハザードマップ上にマンション位置を落し込み大まかな浸水を想定した。
- 浸水ナビ(国土交通省地理院)活用し詳細な浸水シミュレーションにより川が氾濫した場合の到達時間と浸水深さを想定した。
- 地理院地図活用により標高を調査し浸水シミュレーション結果と照合して「対策目標水深」を設定した。(添付資料:ハザードマップ・浸水ナビ・地理院地図)
- 現地調査の実施、電気室(借室)・キュービクル・主幹盤室・給水ポンプ室・エレベーター・管理事務室(防災設備盤)、通信関係設備などで浸水が想定される箇所の調査を実施した。(添付資料:現地調査写真)
- ハザードマップ、浸水ナビ、地理院地図、現地調査を基に最大浸水深さを想定し、保護する設備を重要度区分別および浸水対策箇所の対策案を示した提案書を作成し管理組合様へ提案した。(添付資料:浸水対策提案書)
- 浸水対策提案後に管理組合で承認され、いくつかの対策工事が実施された。(添付資料:対策工事写真)
実施結果
- 浸水対策を行ったマンションで実際に、洪水やゲリラ豪雨が発生し浸水を防げた事例はありませんが、もし洪水等が発生した場合は浸水を防ぐことや浸水被害を低減できると考えています。
- また、浸水対策提案により提案マンションの管理組合様に浸水に弱い箇所や、どのくらいの浸水が想定されるかを示すことにより防災意識の向上につながりました。
- 今後も「水害に強いマンション」の実現を目指し、安心・安全な居住環境を提供するよう提案していきます。
苦労した点・工夫した点
- 浸水対策班(兼務3名)にて、マンション現地調査を実施し現状分析および対策提案するまでの期間が長くなってしまうため、約3ヵ月間のスケジュールで行う事を管理組合様に承諾いただいた。
- 東電・一括受電会社の電気室内部(床ケーブル貫通部など)の現地調査が困難なため、電力会社または保安会社の立会のもと調査を行う事にした。
- 止水関連資材の選定がマンション毎に異なり標準化が困難なため、各メーカーと打合せを行い止水関連資材の選定を行った。 (メーカー工場での立会検証試験も行った) (添付資料:メーカー工場検証試験写真)
- 組合へ提案すると関心は高いが工事費が高額になり保留となるため、全ての工事を同時期に行うのではなく予算化し長期に渡って対策する方向で提案し承諾いただいた。
管理組合・居住者の声
Aマンション
- 詳細に資料を作成頂き、改めてマンションの課題が把握出来た。
Bマンション
- 防災対策委員会で、提案の浸水対策について再討議。優先順位区分1を施工実施の方向で理事会へ再答申を行う方針を固めた。
Cマンション
- 理事会でゴミ置き場内側扉への止水板購入を決定し購入した。
Dマンション
- 予算的には厳しいが理事会での関心は高く継続検討しています。
実施にかかった費用
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収入増や支出減となった費用
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