工事・メンテナンス
部門
佳作
全員参加で改善を重ね、
「高経年のベストモデルマンション」、
「住民が誇りを持てるマンション」を目指そう
ステーションプラザ泉ヶ丘 土居 正弘
背景
マンションの概要
- 場所は堺市南区(泉北ニュータウン)
- 築36年、大阪府住宅供給公社との10階建の複合マンション。住居部84戸(賃貸者は7戸)
- 周辺地域は、2025年の「泉ケ丘駅前再開発」「近大医学部・大学病院移転」で活性化中
年間450万円の管理費削減を実現➡修繕積立金へ振替
- 2021年11月に前管理会社(協会未加盟)に不満があり、管理会社を変更(協会加盟)
- その結果、管理委託費は年間1000万円➡700万円、管理委託外費は年間500万円➡350万円、合計450万円の管理費削減を達成。削減分は修繕積立金に振り替え、長期修繕計画を見直し
- マンション管理計画認定制度で2022年11月に堺市1号認定を取得(全国8番目)。評価制度は申請検討中
4人の理事を中心に管理組合主導で500万円返金を勝ち取る。この使い道は?
- マンション管理士の理事長が、「高い電気代の原因」を前管理会社に要求したが、非協力的であったため管理組合で調査を決意
- 監査経験のある理事が管理会社のミスで電気代の請求漏れを発見(年間50万円)
- 電気設備に詳しい理事が、長年、施設部門駐車場の電気代が振り替えられてないことを証明
- 行政書士資格のある理事が不当利得側と折衝し、時効前の10年分の500万円の返金を勝ち取った。
目的
- この500万円の一時金利用について、住民からは「修繕積立金に振り替えるべき」との意見もあったが、 大方の意見として 「将来も大事だが、今も大事」、「この500万円は管理組合で勝ち取ったご褒美、ボーナス」という意見を踏まえ、今まで予算の関係で導入できなかった設備の導入となった。
設備導入検討のポイント
- 返金分の500万円を超えないこと
- 理事会のみでの検討でなく、アンケートや住民説明会で幅広く区分所有者・住民全員に意見を聞く
- その他、管理会社(管理員含む)、取引業者等の関係者全員に要望を聞く
- 優先順位は、①法的に導入すべき②住民要望が強いもの③住民以外の関係者の要望の順で検討
- 設備選定にあたっては透明性の確保の下、相見積もりを必ず取り、費用削減を図る
- 今回の各設備の導入は小さな改善で、既に多くのマンションで導入されており、インパクトはありませんが、管理組合主導のプロセスや設備未導入のマンションの参考になればと思い、応募しました。
実施内容
全員参加で改善を重ね、「高経年のベストモデルマンション」を目指そう。
1.住民説明会・アンケート、各関係者ヒアリング
- 通常総会時、及びその他1回、合計2回住民説明会を開催
- 導入可否のみならず、運営方法も含めアンケートを実施(添付)
2.要望のまとめ
(1)過去からの要望及び住民説明会での新たな要望の整理
- 階段手摺(既存不適格の解消)
- 自動ドア(手動ドアが重く、特に高齢者には負担)
- 宅配ボックス(住民と業者の双方にメリット)
- 来客駐車場(未使用の空き地を活用)
(2)これまでの100件以上のマンションを見てきた管理会社勤務経験者が、「いいなあ」「導入すべき」と感じた設備の提案
- マグネット・ファイル掲示板(利便性、美観性、安全性) VS 画鋲
- チラシ回収ボックス(チラシの「いる」・「いらない」は住民の判断。紙の再資源化。古紙販売で収益貢献。防 火ステンレス採用)
- 打ち合わせコーナー(業者との商談、居住者の懇談、家族・友人との待ち合わせ等)
(3)その他
- エレベータ内の簡易トイレ(大震災の際の閉じ込め対策)←防火管理者からの要望
- 車輪が不具合のある大型ゴミ箱の交換補修←堺市委託のゴミ回収業者からの要望
- 「泉北をレモンの街にしようプロジェクト」に賛同←地域コミュニティからの要望
実施結果
500万円以内ですべての設備が理事会・総会で承認され導入した。
- 来客駐車場は、空き地の利用で費用もかからないため、消防法、建築基準法、道路交通法を確認のもと、理事会決議とし、2022年3月から実施した。
- 残りの設備は2022年5月の通常総会で、承認され、相見積もりを取りながら、2023年4月までに導入、設置した
苦労した点・工夫した点
苦労した点:来客駐車場の運営ルールづくり
- 最も多く意見をいただき、それをもとに来客駐車場運営ルールの設定(3台、週6時間、1週間予約)
- 都度、住民から要望が増え、できる限り実現するように、この1年で4回ルール改定(週8時間に拡大、夜間は予約時間にカウントなし、10日前予約に前倒、業者用が空いていれば4台まで駐車可能等)
- この1年で84戸中65戸(77%)が一度は使用しており、予想以上の利用があり好評。また、事故やトラブルもなし。
- 要望に対し迅速に対応できるよう、総会決議の使用細則でなく理事会決議規定にしたのもよかった。
工夫した点:自動ドア
- 現行の手動ドアからの変更で外枠が残り通行幅が現行より狭くなる。そこで3枚扉の2枚開きの仕様とし、広い通行幅を確保
- 管理員が勤務中は電源をOFFにして、ドアを開放(通行が容易、故障・劣化抑制、電気代削減、ドア事故の軽減)
管理組合・居住者の声
全体について
- いままで費用が理由で我慢したてた設備が住民の費用負担なく、導入できて大変うれしい。
- 毎月便利な設備が導入されワクワクしている。ずっとこのマンションに住みたい
自動ドア
- 両手に荷物の場合、体で開閉でしており苦労していた。今は安全でたいへん楽になった。(高齢者)
宅配ボックス
- 多くのマンションで導入されており、やっと便利になった(住民)
- 再配達が減り、仕事の軽減になっている(宅配業者)
来客駐車場
- 外にいる息子が来る場合、今までは外の駐車場で借りていたが、便利であり特に無料はありがたい(住民)
- 停車に苦労していたが、出入り口に直接停車できるので安全(介護サービスの運転手)
その他
- マグネット掲示板の導入で、多くの掲示を安全に掲載・移動・撤去が可能になった。掲示板は住民とのコミュニケーションの場であり、やり易くなった(管理員)
- 大型ゴミ箱の交換より、ゴミ回収車へのゴミ移動が簡単になった(ゴミ回収業者)
実施にかかった費用
合計490万円。ただし、500万円の返金の範囲で達成し、区分所有者の新たな負担なし
- 来客駐車場(2022年2月:費用なし)
- 階段手摺(2022年7月:120万円)
- 自動ドア(2022年8月:190万円)
- 宅配ボックス(2022年10月:120万円)
- マグネット掲示板(2023年1月:13万円)
- 6個のゴミ箱入替え(2023年1月:30万円)
- エレベータ内簡易トイレ(2023年2月:10万円)
- チラシ回収ボックス(2023年4月:3万円)
- 打合せコーナー(2023年4月:2万円)
- レモンの樹の植樹(2023年4月:2万円)
収入増や支出減となった費用
- 支出は、宅配ボックスの保守料金(年間10万円)